BRM920宇都宮1000km二日目

team10802008-09-21

ここからしばらくは昨年の埼玉600kmで走ったD35、
あの時は脊椎間狭窄症の発作が出ていて、すごく苦しんでいたところ、
止まりそうなくらいのスピードで上っていたのに
記憶と全く異なる小さなアップダウンが続きます。
ここでトラブル発生、
Qシートを入れていたジップロックがはがれて飛んでしまいました。
運良くお腹に張り付いたので事なきを終えましたが、
かなりまずい状態なのでビニールテープと輪ゴムでぐるぐる巻きの刑に処しました。


浪江町を過ぎてトンネルだらけのR114を津島まで進むと
いよいよ悪名高きR399に入ります、
車同士がすれ違うのがやっとのような山道が続きますが、
基本的に古い道なので
とんでもない斜度は少なく、つずらおりを多用していて私の好きなタイプの道、
山の斜面に忠実に作っているので下りのカーブも読みやすい、
こういう道を残して欲しいな〜
また今度、昼間にサイクリングに走りたい道でした。


R399をいったん降りると久しぶりに町に入って相馬は飯館のPC4(365.1km地点)に04:40到着です。
到着するなり冷たいものが…
気のせいだろうとミートスバゲッティ&かにピラフ、眠気覚ましにアロマブラック、
ボトルには麦茶とコーラ、
補給食も空になったので薄皮チョコパンとフルーツケーキを購入しました。


買い物がすんで外に出てみると…ざ〜ざ〜ぶり…
うそでしょ〜、夢見ちゃっているのかな???
とってもブルーな朝食になってしまいました。


とりあえず、夏用の長袖ジャージを重ね着して、雨合羽とお腹に新聞紙を入れてスタートです。
走り出したときは、寒くってがたがたと震えていましたが、
R399に入ると体が温まっていい感じ、
空も明るくなってきてまわりの景色も墨絵のよう、
でも、雲はかなり厚いな…


何とか7時前にはドロップバックのある福島市のカッパ天国(398.9km地点)に到着、
久しぶりにスタッフの皆さんと再会です。
ドロップバックを受け取って、早速Qシート入れの製作、
風にたなびくとけっこう簡単に穴が開いて水が入ってしまうので
今回は時間をかけてしっかり作りました。
それと、全ての電池交換、
補給食の追加をして、
着替えは…やめておきました。


今回のブルベ前に変えたサドル、
Nしま店長に「すごいチャレンジャーだね」と言わしめたS-maniaのサドルがすこぶる良くて痛みがあまり無く、
ジャージを変えることなく進むことにしてしまいました。
この判断が後でとんでもない事態を招くことは、今となっては想像に容易いことであったと思います。


走り出してすぐにR399に戻ります。
雨はますます強くなってきました。
摺上川ダムまでは新しい道なので勾配の強い真直ぐな道が続きますが、
ダムを過ぎて鳩峰峠を越える道はやっぱりR399らしい古いタイプの道、
とっても楽しく下って米沢は高畠町のPC5(448.6km地点)に09:30到着です。


とってもお腹がすいていたので牛丼弁当&カップめん、
補給食もランチパックのピーナッツバター&ハムチーズ&タマゴサラダを取りました。
ボトルは相変わらず麦茶を満たして準備万端です。


体の方は、喉がいがらっぽくて背中が痛いのは相変わらずですが、
それ以外は左の腕が張っているぐらいで他は問題なさそう、
眠気もきませんでした、
今のところ予定通りかな?


ここからは主要国道であるR113に入ります、
この辺で日本海に抜ける道はこの道しかないので、いやな予感はあったのですがものの見事に的中でした。
道も路肩が少なめ、さらに路肩と車道の間にちょうどタイヤが引っかかる段差があって、
白線の内側を走らなければなりません。
しかし大型トラックの交通量が多くって、たびたびトラックの進路をふさぐ状態、
私は個人的に車の交通を妨げるようなサイクリングは否定的なので、
こういう道は交通ルール違反ですが歩道を走ります。
当然、歩道は荒れているので下りなんてブレーキのかけっぱなしです。
速く楽チンなんて走れません、
でも、この道の『いつも』を乱したくは無いんですよね…


でも、そんな走り方を続けて30kmを過ぎたときに悲劇は突然やってきました。
橋の段差をこえたショックでお尻の皮が突然むけたのです、
それも、両方…後500kmむけたお知りで走るのか…
それまでポジティブであったテンションが一気に落ちて行くのを感じました。
「自転車のどこか壊れてくれ、そうすれば止められる…」


道はJR奥羽線までたどり着きました、
庄内平野に入って道は真平、雨も止んでいます。
もう、雨具は要りません、
街中を淡々と走って、水没している交差点を左折したとき、
水の中のグレーチングに乗ってしまったらしく、激しくスリップ、
両ボトルを飛ばして、前輪を左右に振りながら必死の建て直し、
気持ちの隅ではこけて楽になってしまえと悪魔がささやいていましたが、
さすがに街中ではかっこ悪いでしょうと何とかバランスを取りました。
でも、車を止めてボトルを取りに行くのも、かなり恥ずかしかったです。


気を取り直して走り出すと前輪がブレーキに当たっています。
今の衝撃でホイールが緩んだのかと思ってホイールを触るとすごくがたついています、
ホイールをはずしてハブシャフトを触るとガタガタ…
片側のベアリングにがたが出ています、
これで終われると頭では思っていますが、両手はFブレーキのクリアランスを広げにかかっています。
止めれば楽になるのにと必死に叫んでいる自分と、
ホイールがブレーキに当たらなくなってにんまりしている自分、
思わず笑ってしまいました。
「私は客観的に自分を見つめることが出来るんです、あなた方とは違うんです!」なんだ〜


Fハブは回転するたびにパッキンパッキン言っていますが、
ハンドルを取られるようなことも無く、普通に走っています。
ならば走れなくなったら止める事にしました。


気温も上がってきて紫雲寺のPC6(544.7km地点)に到着したのは13:47でした。
この区間で体も気持ちも落ち込んじゃったので、
気持ちを立て直すのは食い物だろうと、
大好きなコーンポタージュ&ジューシーナポリタン&いなり寿司&プリンアラモード&白玉あんみつのフルコース、
おいしくいただきまして、
「おい!うー、今日もお前の力を見せてくれ」「いいよぉ〜」状態に復活です。


走り出すと気持ち悪い〜、お尻は痛くて平地でもダンシング多用、ホイールはパッキンパッキン、
でも、なんか楽しい、
道が田んぼの中を走る農免道路になって、交通量が減ったからかな、
とってものどかな道を走っていて、房総だったら道しるべや素彫りのトンネルがある雰囲気、
なんか無いかなーってキョロキョロしながら走っているものだから、ちっとも速くはありません。


さらに街中に入るとフリース見たいな暖か衣料が買いたくてお店をうろうろ、
でも、結局は収穫なしでした。


磐越自動車道をくぐってしばらくすると小さな上りが始まります。
すると、またしても雨が落ちて来ました。
薄暗くなり始めている空は、どんよりしていて雨は続きそう、
雨粒も冷たくて衣料を買えなかった事を少し後悔し始めていました。


ライトを点けるころには雨粒も大きくなってきて路肩に水がたまり始めています。
気温も下がってきています、
小さな町に入ってすぐに栃尾のPC7に18:25到着です。


さすがに寒くなってきたのでタオルを買ってヘルメットの中に忍ばせていくことにしました。
ここからは体温維持が大切とカルビ丼とキムチヌードルいただきました。
この先のコンビニまでは120km以上あるということなので、
補給食もソイジョイ3本、薄皮アンパン、おにぎりを2個追加、
ボトルも麦茶を満たしました。


実はこの町、しまむら風の洋品店があったみたいなんです、
でも、PC7に着いた時には食べ物で暖を取ることばかり考えていて、
暖か衣料のことはすっかり忘れていました。


PC7から3.5kmほどのところにある道の駅では、スタッフの通過チェックとドロップバックのサービスがありました。
今回は荷物を預けていませんでしたので、通過チェックをしていただいてそのまま先を行くことにしました。


雨はだんだん強くなっています。道路の温度表示は15℃、まだ大丈夫でしょう。
小さなアップダウンをこなして行きますが周りが全く見えないので、どんなところなのか分かりません。
いったん只見線沿いに下りて、再び上り基調になるといよいよ六十里越えの始まりです。
次々と表れるスノーシェードに雨宿りが出来ると喜んでいましたが、
あまりの数の多さと反響する沢の流れのとどろきが、だんだん不安を増長していきます。
長いトンネルをパッキンパッキン音を響かせて走っていると、
違う音が追いかけてくる錯覚が…怖くても前しか見ることが出来ません、速く進むことも出来ません。
やっとのことでトンネルを越えて九十九折を下りきると22:00只見線に再会です。


ほっとして、久しぶりの平らな道を走り始めますが、
雨と道路の水の量が異常に多くって、さらに不安は高まっていきました。
そして、只見駅の交差点を曲がった瞬間、目の前の世界が変わりました。
雨粒の大きさ量が激しくなって、前が見えない…雨で全てがグレーに塗りつぶされてしまっています。
すぐに自転車を止めると、自転車のライトは道路よりはるかに高い場所を照らしています。
道路に打ち付ける雨粒のしぶきが高く跳ね上がって道路より50cmぐらいまでスクリーンを作ってしまっているようで、
ライトの光はそのしぶきの上端で反射してしまっている感じ、
それがさらに激しくなって、ハンドルを隠すところまで上がってきます。
足元は一歩前に道があるのかさえ分からず、水の流れる音と雨粒が道路を叩く音が恐怖心をあおります。
まるで溺れているような息苦しさの中、前方に見える灯の方に手探りで進んで行くと
そこはコイン精米所の一畳ほどの小さな建物でした。


精米所の中に入ると、今まで経験したことの無い震えに全身が襲われました。
怖さだけではなく、急激に体が冷やされたためのようで、
私が精米所に入ってすぐに曇った窓ガラスが外気の気温の低さを物語っていました。
うずくまって震えながら、瞬きもせず窓の外を見つめていた気がします、
目をつぶった瞬間、眠ってしまうような気がして、
そうなったら二度と目を覚まさない気がしていた…
冗談じゃなくて本気でそう思っていました。


空が稲光で一瞬明るくなったとき、窓ガラスをふく左腕の時計がすでに翌日になっていることを知らせてくれました。