北海道1200km3日目

767km地点、久しぶりの信号連発は足寄の町、
誰もいないのにしっかり信号に引っかかる、

町を過ぎると真っ暗闇、牧場地帯のような気もします、
突然足元でカサカサって音がしたと思ったら右の足元で犬がほえた!
びっくりして路肩から落ちそうになりながら何とか立て直しますが、
また足元で突然ほえる犬!
とりあえず逃げるっきゃないでしょう
ゆるい上りを全力疾走、
ほえる声がどんどん遠ざかります、
疲れた…
一気に疲労感が襲ってきました。

よれよれになりながら次の街中、街灯がありがたい、
程なく780km地点、本別のPC7に到着しました。
かなり冷え込んでいます、
カップヌードル買ってしまいました、
後、おにぎり3個(うち2個は補給食)缶コーヒー、
ボトルの水は100kmほどで600mlほどしか飲んでいませんでした。

30分ほど休憩しますがK澤さんは到着しませんでした。
相変わらず単調な道を走ります、
風は相変わらず向かい風、霧も出てきました。

817km地点の幕別を過ぎるとさらに風が強くなってきました、
旗はばたばたと引きちぎれんばかりにはためいて、
時たま突風も襲ってきます。
たまらず糠内町の超豪華トイレ暖房付きバス停に避難、
レインウェアーを着て腰を下ろした瞬間寝てしまったみたいです。

目を覚ますと外はすでに夜明けを迎えていました。
風は相変わらず、さらに霧も深くなってきています。

いくらまってもしょうがなさそうなので、とっとと出発。
辛いです…
すぐに全身ずぶぬれ、ヘルメットから水滴が滴っています、
メガネも水滴でよく見えません。
霧なんですが、水滴の粒が大きくって雨が空中に浮いている感じ、
レインウェアー着たままスタートしてよかったです。

とにかく雨の中をずっと上っている感じ、大樹町も広尾町も真っ白です。
広尾町のコンビニで緊急避難、
お腹が冷えてしまったみたい、
さらに小さい方は30分おきにもよおすようになってしまいました。
つまり、ここから襟裳岬を過ぎて浦河町辺りまでの100kmは
トイレ探しの旅となってしまいました。

太平洋に出てきました、
黄金道路も向かい風&霧、よく見えません、

ちょうど昆布漁の最中でそれを眺めながら走ります。
気温も上がってきたのでレインウェアーを脱いで走ります。
皆野漁港から黄金道路を離れて襟裳岬に向かいますが、
なんと街中で鹿が道路を横断中!けっこうびっくり!
襟裳岬の突端まで15km、長い…
これって岬の長さじゃなくって半島の長さでしょう!
なんて八つ当たり、
最後の上りをがんばって937km地点のPC8到着は08:37でした。

PC8は有人PC、K澤さんが20分ほど後を走っているとのこと、
ここで私がまったりと食事をして時間をつぶしていると
K澤さんもまったりしてしまうでしょう、
ここは心を鬼にして
コーヒーだけいただいて速攻スタートです。
ここで私が前を走っていることを知れば、
私に追いつくまではがんばって走るでしょう、
彼には記録を意識してもらいたい、
ならば私はねずみになることにしました。

頻繁にやってくる尿意はめんどくさいですが
とにかくがんばって逃げて見ましょう。
風はなぜかこの区間も向かい風、
さらに交通量も増えてくるし、路肩は荒れて狭いし、
けっこう辛い走りを強いられます、

海岸には海獣の姿?
突然の自衛隊の演習、
道のアップダウンは激しくなり
路肩の幅は30cmほどになってきました。

1031km地点の日高のPC9には12:20到着、
冷やし中華とおにぎりとカツゲンセットでお昼ご飯、
トイレに2回行って、
今まで届いているメールの処理が終わったところでK澤さん到着、
ずっと全開走だったそう(ほんとかな?)
でも、もうちょっとがんばって48時間を切っていただこうと
私はすぐにスタートしちゃいます。

ここからはサラブレッドの牧場が続いて良い雰囲気、
だけれど写真も撮らないでがんばります。

PC8を出て1時間半、ついにK澤さんに捕まりました、
凄い速度差で抜いて行きました。
これで私の役割はおしまいです、
後は風に乗って48時間を切りに行ってください。

1080km地点のむかわから内陸に入っていきます。
いよいよフォローの風…
のはずがアップダウンが強くってあんまり感じません。
さらに交通量が増えてきて自転車は路肩に追いやられます、
路肩は多分に漏れずがたがたで
1100kmを過ぎるあたりでついにお尻がむけてしまいました。
こうなると平地でもダンシング多用です、
が、これが功を奏したのかペースアップ、
メーターの数値が常に『30』を超えるようになってきました。
このペースなら48時間は切れないものの、48時間半の可能性も出てきました。

1137kmの角田の交差点を過ぎると風に乗ってさらにペースアップ
かなり良い感じです。

ところが…

前方に目を移すとかなり遠くに白い自転車の姿が見えます、
その姿、あっという間に大きくなって目の前に、止まっているのか…

いいえ、走っていました…
ひざが痛いそうでほとんどこげていません、
5回転もクランクを回すと足が止まっています。
ここで私が前に出ればひざの痛みをこらえて併走するでしょう、
彼は昨年フレッシュでひざを痛めています、
周りの人のためなら
ひざの痛みなど2時間我慢することはぜんぜん平気な人なのです。
でも、今日は違います、
すでに1140km以上走っていて後60km、
痛みをこらえて走って良い訳がありません、
フレッシュの後回復までに一ヶ月以上かかったそうです、
彼はAJのいや日本の宝です、
そんな無駄な時間を作るわけには行かないのです、
幸いにも50時間を切るなら20km/hでも十分届きます、
私は全てを彼にゆだねることにしました…

彼は無理をしませんでした、
いや、彼の精一杯の姿だったのかも知れません、
1200km走っていればまったく走れないような区間が必ず来るものです、
私の場合、PBPでは8〜900kmを嘔吐を繰り返しながら走っていましたし、
今回は890〜990kmあたりで下痢と尿意に苦しめられました。
同じように彼は今、まったく走れない区間を経験しています、
私は今の走りをしっかり目に焼き付けておこうと思いました。

1160km地点、岩見沢のPC10には17:32に到着しました。
この20kmを1時間15分かかりました、
かなりぎりぎりかもしれません、
スタッフにゴール予想時間を連絡して、10分ほどの休憩で再スタート、
相変わらずのペースです、
最初も10kmが32分、20km通過が70分、
このままのペースではかなり難しくなってきました、
心を鬼にして彼に伝えます、
「このままでは50時間切りは厳しい、ペースアップが必要…」
一気にペースは25km/h台に上がります、
30km通過が96分、もう大丈夫でしょう、
Qシート最後の指示、市道から公園道路に入ると
駐車場に照明と人影が見えてきました、
後300m、終わってしまうのがちょっと寂しかったです。

ゴール19:46…49時間46分
良かった…

こんな半端な時間に帰ってきた私たちを
快くむかえてくださるAJ北海道の皆さんに感謝、

ゴール後健康ランドへ、
風呂に入っていろいろチェックして、
2階に上がったら食堂は終了、
そこから色々1時近くまで話していました、
彼がこのイベントにかけていた事、
絶対に50時間を切りたかった事、
誰にも負けたくなかったこ事、
そのために今年参加したブルベでは
完走時間に関係なく多くのテストや練習をした事、
襟裳岬で私が先行していることを知って全開モードで追っていった事、
(彼を本気にしたことを知って嬉しかった)

そして彼がたどり着いた結論は
方法は違えど私が眠くならないためにやっていること同じだった事、

仮眠室はいびきの大合唱、
でも、その中での眠りはとっても気持ちのいいものでした。